2026年10月15日

新・平熱日記 第2回
おしゃべりなひと

花の木にて 2026 8月
絵は筆者 《花の木にて 2026 8月》2026 金網 漆喰 アクリル絵具 5×5㎝

それにしてもジュンちゃんはよくしゃべる。ジュンちゃんは一昨年の個展に来てくれて以来、私の作品のファンになってくれて、ここを勘違いしてはいけないのだが、あれ以来異性の友人として親しくしてくれている。今回は父上の初盆だから帰って来たと連絡があって会うことになった。

関西に住んでいるわりに標準語。それから声の調子も話しぶりも耳障りがいい。頭もいいんだろう。今も図書館司書をしているだけあって話題も豊富で話術にも長けているから飽きない。しゃべくりだけどしろしい(山口弁で五月蠅い)わけではない。高校の時にはみんなの憧れの的だった彼女。当時は意図的に「硬派女子ブロック」をしていたと白状したが、恐らく高校生の斉藤少年が親しく彼女と話をできたとしても彼女の方が一枚も二枚も上手で相手にならなかっただろう。

駅から降りてきた彼女を拾ってまずは海辺の展望台に登って瀬戸内海にご挨拶。その後半世紀前から変わらない喫茶店でお茶を飲んだりして、その間もジュンちゃんのトークは絶好調。そして今回ジュンちゃんたっての希望だった粭(すくも)島のホーランエー食堂に向かう。いつもは昼のみ、それも限られた曜日の営業だがお盆の間だけ、恐らく帰省する方々に向けてだろう、夜に営業するということで奇跡的に来店が叶った。夕方訪れたホーランエー食堂では日暮れる海や工場の夜景を楽しみながら瀬戸内ののんびりとした時間と美味しい手打ち蕎麦と彼女の絶え間ないトークを満喫した(よくしゃべる人はよく食べる?)。

ひとつ心残りだったのはトモエさんに会えなかったこと。トモエさんはこの島に住む同級生。ジュンちゃんとトモエさんは共に剣道部で私を含めて三年生の時には同じクラスだった。最近大学の先生の仕事を終えてお母様の住むこの島に戻って来たという。店主のトオル君はすぐ近くに住む彼女の家まで呼びに行ってくれたのだが残念ながら会えなかった。

その後ジュンちゃんはトモエさんと連絡が取れたらしく、今度また法事で帰って来るタイミングで三人で会おうということになった。ところがそれからジュンちゃんが、あの人も呼ぼう、この人にもと声をかけていったら総勢十二人の同級生がホーランエー食堂に集まることになった。

台風の進路にやきもきしながら、でも雨交じりの空はなんとか持ちこたえてくれた。高校の時には面識もなく話したこともない人もいたけど、半世紀の止まった時間は一瞬で動き出した。ジュンちゃんはわざわざ私の作品や資料を持参してみんなに披露してくれて。こうして昼から始まった宴は気がつけば夕方まで続いた。

日が沈むころ、ジュンちゃんを送っていく車窓。彼女のおしゃべりバッテリーの残量はまだまだ十分に余裕あり。その時突然西陽がカッと差してきて大きな二連の虹が。「見て!ジュンちゃん!」ドラマならクライマックス?しかし半日、彼女の話に合いの手をいれていただけの私の声は既に枯れていた。「きっといいことあるね!」ノーレイン、ノーレインボー。ノーオシャベリ、ノージュンチャン。

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